音楽と共に現れた新たな「進撃の巨人」ワールド! 「Linked Horizon Live Tour 2017 『進撃の軌跡』」最終公演レポート

2017年11月9日、10日と「Linked Horizon Live Tour 2017『進撃の軌跡』」の最終公演が2日にわたって川崎で行われた。

Linked Horizonのライブイベントとしては、2012年にゲーム「BRAVELY DEFAULT」の主題歌やBGMをLHの主宰・Revoさんが担当した際の「Revo Linked BRAVELY DEFAULT Concert」、2013年にトーク&ライブイベントとして開催された「自由への進撃」以来となる。

 

RevoがLinked Horizonとして勝手に生み出した音楽世界

 

Linked Horizon(以下、LH)は、サウンドクリエイターであるRevoさんによるプロジェクトで、アニメ「進撃の巨人」第1期・2期や劇場版などのアニメで主題歌を担当している。今回の全国ツアーは、そのLHがリリースしたアルバム「進撃の軌跡」を掲げたもので、2017年7月8日に市原市市民会館を出発した後、台湾・香港を経由して今回の川崎まで全国19か所30公演+海外2か所4公演、まさに「進撃の巨人」の調査兵団がごとく各地を駆け抜けた。

 

このツアーは、決して「進撃」の主題歌や劇伴を演奏するだけのコンサートでもなければ、アニメ「進撃の巨人」の主題歌を担当したアーティストLHのライブツアーとも異なる。最終公演とは書いたが、ツアーはいまだ終焉を受け入れず、「『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演」が横浜アリーナで2018年1月13日・14日に行われることが発表されている。「進撃の軌跡」を未体験の「進撃の巨人」ファンは、この好機を逃さずに参加してもらいたい。なぜなら、「進撃の軌跡」ツアーは、原作者・諫山創さんが作画に中川沙樹さんを従えて公式パロディコミック化した「進撃!巨人中学校」や、荒木哲郎監督がWIT STUDIOと手を携えて制作したこれまでのアニメ作品、あるいはライトノベルやゲームといった数々のスピンオフ作品と同様の位置にあるからだ。「進撃の巨人」ファンならば気になるだろうし、その期待を超えた満足感を得られると思う。

 

ただ、Revoさんは川崎公演でも、こう自虐的に述べていた。

「みなさんと同じように勝手に漫画を読み、勝手に想像して、ただそこで少し違うのは勝手にCDを作ってしまった」

つまり、Revoさんは「勝手に」音楽で「進撃の巨人」を表現しているに過ぎない。アルバム「進撃の軌跡」は「進撃の巨人」をテーマとしながら、やはりLHのアルバムであり、コミックスのイメージアルバムでもアニメのサウンドトラック集でもない。つまり、「進撃の軌跡」ツアーは、「進撃の巨人」世界を音楽化したアルバム「進撃の軌跡」をライブ化したもの。あるいは、ステージという俎上に上げたという意味で「舞台」化したものと言える。Revoさんはみずからを団長に据え、(Linked Horizonと調査兵団の名をかけた)「鎖地平団」という団名を掲げ、世界に点在する支部を巡るというコンセプトでツアーを展開。ライブ会場で体験できるのはまごうことなき「進撃の巨人」世界と感じられるが、それはRevoさんが脳内で生み出した「勝手」な解釈である。だからこそ、「進撃」ファンにはRevoさんの答えを体感しにツアーへ足を運んでもらいたい、Revoさんを支える数多くのファンは周囲の「進撃」ファンを誘ってもらいたい、と感じる。Revoさんによる解釈をどう受け止めるのか、素直に聞いてみたくなるではないか。

 

ただ、Revoさんが作る「進撃」楽曲やショーからは、ひとりの「進撃」のファンとして同士に突き付けられるだけの解釈へたどり着こうとする強い意志を感じさせる。全公演でライブの曲目は(アンコール曲を除き)共通しており、曲順もアルバム「進撃の軌跡」(通常盤)がベースとなっている(M-1とM-2の間にシングル「自由への進撃」のカップリング曲「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」が挟まれている)のも「進撃の巨人」を楽曲で表現するという完成形をすでにアルバムで実現しているという自負ではなかろうか。

(撮影/阿部薫)