2015年に「おそ松さん」を大ヒットさせたぴえろは、「幽☆遊☆白書」(1992年)や「NARUTO -ナルト-」(2002年)など、少年ジャンプに掲載されたアクション漫画のアニメ化でおなじみの制作会社だ。
そんなぴえろは、1983年に自社のオリジナル企画「魔法の天使 クリィミーマミ」を立ち上げている。「クリィミーマミ」以降、ぴえろは「ぴえろ魔法少女シリーズ」と銘打ったオリジナル企画のアニメ番組を1998年までに5作品も制作した。なぜオリジナル企画を続けず、漫画のアニメ化に積極的になったのだろうか? 自社のオリジナル企画と、人気漫画のアニメ化。どちらが制作会社にメリットをもたらし、どちらがアニメ文化を豊かにするだろうか? ぴえろの創立者であり、現在は最高顧問の布川郁司氏に、理想的なアニメ企画について聞いてみた。
新たな玩具を売るために、オリジナル企画が必要だった時代
── 「魔法の天使 クリィミーマミ」(1983年)でオリジナル路線を確立したぴえろですが、現在、オリジナル企画は減っていますよね。それは、なぜなのでしょうか?
布川 もちろん、オリジナル企画も続けたかったのですが、アニメをめぐる環境が変化したことが大きいです。われわれの業界は子供が見る時間帯にアニメ番組を放映してきましたから、番組スポンサーは玩具やお菓子、文具のメーカーでした。「クリィミーマミ」のメインスポンサーはバンダイでしたが、それまでバンダイの女玩(女児向け玩具)を作る部署が主に組んでいたアニメ会社は、東映動画(現・東映アニメーション)さんだったんです。当時は子供の数が多くて、景気もよかったので、東映ではなく別のアニメ会社と一緒に新しい女玩を売っていこうと企画されたのが、葦プロダクション制作の「魔法のプリンセス ミンキーモモ」でした。その流れで決まったオリジナル作品が、当社の「クリィミーマミ」です。「機動戦士ガンダム」もそうですが、当時のオリジナル企画は、いつも玩具メーカーがバックボーンとなっていました。そして、そのようなオリジナルのアニメ番組は、ゴールデンタイムから外れた夕方の時間帯に放送されることが多かったと思います。
── 「クリィミーマミ」は、毎週金曜18時からの放送でしたね。
布川 民放のテレビ番組は、スポンサーが出資したお金で成立しています。ゴールデンタイムに2時間や3時間のスペシャル番組を組んで、その大きな放送枠で多量のスポンサーをつかまえることが重要なわけです。その点、広告代理店からすれば、30分枠のアニメ番組は営業しづらい。そのため、ゴールデンタイムからアニメ番組が外されていったんです。深夜帯ともなると、ほとんどスポンサーはつきません。生き残るためには自分たちで製作委員会をつくって、制作費だけは確保するように方向転換せざるを得なくなりました。現在、日曜以外のゴールデンタイムに、アニメ番組はほとんど見当たりませんよね。子供の数も減りましたので、女玩を売りたいバンダイさんにとっては日曜朝の女児向けアニメが1本あれば十分で、ほかにオリジナルの番組は必要なくなったのでしょう。テレビアニメは、テレビ局とスポンサーの関係に大きく左右されるわけです。
── では、テレビアニメの商品は売れなくなってしまったのですか?
布川 いえ、年間ベースでアニメ関連商品の売り上げは、ほとんど落ちていません。子供が減った分、マーチャンダイジングの主軸が成人に移ってきたためです。「おそ松さん」(2015年)のグッズを買ってくれている人たちも、年齢層は高いと思います。