韓国社会の裏側まで見えるゾンビ映画「ソウル・ステーション パンデミック」公開記念!キウン役の前野智昭&イサン役の多田野曜平インタビュー!!

2017年9月30日(土)より、東京・新宿ピカデリーほかにて公開される韓国アニメ映画「ソウル・ステーション パンデミック」。韓国のアニメーション界で注目を集めてきた新鋭、ヨン・サンホ監督が、自身初の実写長編映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」と同じくメガホンをとった物語で、「新感染 ファイナル・エクスプレス」の前日譚となる物語だ。格差社会や、国家権力の機能不全、極限状況下であらわになる人間のエゴなど、痛烈なエピソードで現代社会に警鐘を鳴らすストーリーと、皮肉たっぷりのクライマックスが世界の映画祭で話題を呼んだ。アヌシー国際アニメーション映画祭やシッチェス国際ファンタスティック映画祭の招待作品として上映され、ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭シルバークロウ賞、アジア太平洋映画賞(Asia Pacific Screen Awards)最優秀長編アニメ賞などに輝いている。

日本語吹き替えでは奴隷的な風俗店の生活から逃げ出したヘスン(シム・ウンギョン)役に白石涼子さん、彼女に売春をさせている甲斐性なしの恋人・キウン(イ・ジュン)役に前野智昭さん、ヘスンの父を名乗る男(リュ・スンリョン)役に辻親八さん、そしてホームレスの男・イサン役を多田野曜平さんが演じ、ソウル駅周辺で起こった感染パニックの始まりが描かれる。

今回、アキバ総研では、吹き替えを担当した前野智昭さん、多田野曜平さんにインタビューを敢行。本作について、率直な思いを語ってもらった。

【インタビュー】 ※敬称略

■韓国映画の吹き替え、声優視点での「難しさ」とは?

──台本や映像など、作品をご覧になっての感想をお聞かせいただけますでしょうか。

前野智昭(以下、前野) すごく斬新なシナリオでしたし、あまり日本にはない演出のアニメーションだったので新鮮だなと思いながらやらせていただきました。こういう作品って、台本読んでいてもそうなんですが、作品を観ていて飽きないので、仕事というのを忘れて普通に楽しみながら台本チェックもさせていただきましたね。

多田野曜平(以下、多田野) 正直な感想を言うと、「キター!!」っていう感じだったね(笑)。日本語版のプロデューサーもスタッフも素晴らしいんですよ。作品の内容については、もうリアルで怖かったね。落ち着いた後には、これをどう「面白く」していくかを考えてましたね。そうこうしていたら「特に面白くする必要はないので、リアルに演じてください。」と言われました(笑)。

──演じたキャラクターについて教えてください。

前野 キウンはどうしようもない男ではあるんですが、絶体絶命の状況下で彼女を心配する一面もあったので、本当のクズではなかったな、という印象でした。終盤では彼女のためにいろいろと身を挺して行動できる、男らしい一面を持ち合わせているキャラクターだったので、本当のクズじゃなくてよかったです。

多田野 僕はイサンというホームレスのおじさんを演じさせてもらったんですが、実はもう一役、最初に発症するおじいさんも演じたんですよ。イサンは、ずっとヘスンと旅をする普通のおじさんです。ホームレスになった事情はわからないんですが、特別に何かスキルがあるわけでもないごくごく一般の、本当に普通のおじさんだと思いますね。

──演じていてお好きなシーンや、印象に残っているシーンはありますか?

前野 彼女の身を案じるシーンは共感できる部分もありますし、印象に残っていますね。あとは、こういう状況の中でひとりになってしまうシーンでの心細さはすごく共感でできたので、特にシンクロしてお芝居できたなと思いましたね。

多田野 「帰りたいよー!」って泣くシーンですね。どこか特定の場所っていうことではなくて、「家族のもとに帰りたい」っていうことだと思います。だから本当に、世の中のおじさんの代表というか。ホームレスじゃなくても、普通の、何かの事情で単身赴任している人とか、一緒に暮らしていても心の距離感があるおじさんとか、そういういろんな事情を抱えたおじさんの代表かなと。あとは日本人にはわからない徴兵や戦争といった政治的な背景もあるんでしょうね。現在の韓国に対して苦言を呈するというか、そういったところも新鮮でしたね。彼の言葉は、今の時代に住んでいる50代くらいのおじさんがみんな思っていることかなと思うので、そういうところも観てほしいですね。

──演じた役以外で演じてみたい、なってみたいキャラクターはいましたか?

前野 やってみたい、ですか……?

多田野 この作品、いいやつ出てこないもんね(笑)。

前野 こういう状況になってしまったら武器があったほう方がいいと思うので、警官とかですかね。

多田野 警官もみんな死んでなかったっけ?(笑)

──アフレコの際の裏話があったら教えていただけますか?

多田野 書けないようなすごい大事件が起きたんだよ。でも、無事に収録も済んで、こうして形になっている、と(笑)。