「全世界のアニメファンが選んだ『訪れてみたい日本のアニメ聖地88』(2018年版)」が、2017年8月26日に発表された。一般社団法人「アニメツーリズム協会」が、国内外のアニメファンからの投票をもとに、国内のアニメ関連スポット88か所を選出。アニメの舞台に足を運ぶファンの行動「聖地巡礼」による、観光資源の創出や、地域創生がねらいだ。
発表会は、8月26日(土)に開催されたキャラクターとホビーの大型イベント「C3AFA TOKYO 2017」内で行われた。アニメツーリズム協会会長を務めるアニメ監督・富野由悠季さん、「Newtype」元編集長でKADOKAWA代表取締役専務の井上伸一郎さん、元モーニング娘。で、現在はバンド・LoVendoЯボーカルの田中れいなさんらが登壇したステージの模様をお届けしよう。
冒頭の挨拶で富野さんは「この10年、アニメが媒体として進化してきた。だからこそアニメツーリズムというものが成立している」としつつ、「協会としては、『観光地の渋滞化』という課題が見えてきた。今後それを解消してくのが我々の役目」と、鋭い指摘を述べる。
さらに、観光庁長官の田村明比古さんも登場。「世界中のアニメファンの投票で決まるというのはアニメ先進国の日本ならでは。アニメツーリズムが地域の方々にとって街を盛り上げていくきっかけとなり、アニメファンにとっても満足のいく体験になればと期待しています」と、発表会の開催を祝した。
今回発表された「アニメ聖地88」について、田中さんは「『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するアスカに似ていると言われるので、エヴァの聖地が気になります」と話す。いっぽう、選出された88か所に対し富野さんは「気に入らない。自分が関わった作品がないから」と冗談めかして笑った。そして「選出された地域を見ると、もう少し北海道地域をアニメの力で盛り上げられたらと思います。そこに目がいってないというのは、アニメ関係者は僕みたいに自分のことしか考えてない人が多いから(笑)」と自虐をまじえつつ、今後の発展を期待する。
また、本イベントには漫画家の松本零士さん、声優の古谷徹さんからビデオメッセージも寄せられた。松本さんは自身の故郷である福岡県で、北九州市漫画ミュージアムが選出されたことへの喜びをコメント。また、古谷さんは世界から訪れるアニメファンに楽しんでもらえることを期待しますと話し、「アニメ聖地88、いきまーす!」とおなじみのセリフでメッセージを結んだ。
続いて、選出された88か所の中から、岐阜県、埼玉県、鳥取県の自治体担当者がゲストとして登場。岐阜県飛騨市の都竹市長は、劇場アニメ「君の名は。」効果で、今年すでに8万人が飛騨市を訪れたと話し、改めてアニメの影響力の大きさを知らしめる。
さらに、田中さんがアニメツーリズムを実践してきた写真も紹介。田中さんはアニメ映画「時をかける少女」の舞台となった東京・国立博物館を訪問。館内のさまざまな場所で写真に写る田中さんは「主人公の真琴になりきっていました」と振り返る。また、ゲーム「刀剣乱舞」に登場する日本刀・三日月宗近の展示を食い入るように見つめる様子もカメラに収められており、今回のお出かけを楽しんだ様子。「実際に行ってみないと感じられないこともあるので、ぜひみなさんに行ってほしいと思います」と、思い出をしめくくる。
ここで富野さんからひと言。「何でもアニメに落とすなと言いたい。アニメを出発にしてもいいけれど、それを入り口に、その建造物などの歴史的背景などについても調べるなど、広い視点を持ってほしい」と、富野さんならではの厳しくも愛のある表現でアニメツーリズムへの思いを語っていた。
エンディングでは、井上さんがイベントを総括し「アニメ聖地は、街角のちょっとした風景が特別なものに変わる。日常の中で心が豊かになれるので、そういう気持ちをぜひ日本や世界の方に味わってほしい」とコメント。富野さんは「地方によって困難な課題がたくさんあるけれど、アニメツーリズムをきっかけに動いてほしい」と話した。こうして地域活性を担うアニメツーリズムに登壇者一同が大きな期待を寄せ、イベントは終幕した。
(取材・文/高橋めねぎ@TRAP)