バンダイのプラモデルといえば、パーツ状態で色分け済み、接着剤不要が最大のセールスポイント。この初心者ウェルカムの仕様で、より下の世代や、今までプラモデルを作ってこなかった女の子たち向けの玩具を作れないだろうか?――そんな素朴な思いから企画されたのが、バンダイ・プレイトイ事業部が4月下旬から展開中の「ハコルーム くまのがっこう」シリーズだ。
かわいいクマのキャラクターと、組みかえ可能なドールハウスをラインナップしているが、パーツを番号どおりに組み立てていく商品内容は、まさにプラモデル。「ハコルーム」が目指す遊び方とは? 「ハコルーム」によって、プラモデル市場はどう変化するのだろう? プレイトイ事業部の三澤真優子さん、宮地俊輔さん、社長室・広報チームの大木亜希さんにお話をうかがった。
「ハコルーム」はプラモデルなのか、組み立て玩具なのか?
── まず、「ハコルーム」の企画の発端を聞かせてください。
三澤 ご存知かと思いますが、バンダイホビーセンターという、プラモデルを中心に生産している工場が静岡にあります。ホビーセンターで培われた技術を使って、「プラモデルで、より“オモチャ”っぽい製品はつくれないだろうか」という話が以前から何度か出ていました。しかし、国内生産ですのでコスト面でのハードルがありましたし、技術面でクリアできない問題があったりして、なかなか実現しませんでした。
今回は、チャレンジコンテストという社内での公募企画がありまして、私の所属するプレイトイ事業部で「プラモデルの製造技術を使った、女の子向け玩具企画」を提出しました。その企画が見事に通りまして、会社から開発費用を援助してもらう形でスタートしました。
── これはプラモデル企画なのか、結果的にプラモデルになったのか、どちらでしょうか?
三澤 「プラモデルの機構を使って、女児向け組み立て玩具をつくれないか」というアイデアから始まった企画です。“プラモデル”というコンセプトから始まっていなくても、結果的に“プラモデル”の形に行き着いたのかも知れません。プラモデルを作ったことのある方ならおわかりと思いますが、色ごとに区分けされていて、番号も振られていて、説明書とつき合わせて部品を探しやすい商品ですよね。ドールハウスの組み立てキットを私も買ったことがありますが、まず部品を探すのが大変なんです。その点、プラモデルは最初から部品が整頓されていますから、小学生向けの組み立て玩具として、とてもすぐれていると思いました。
── ご自分でも、プラモデルを組み立ててみたわけですね?
三澤 ハコルームは対象年齢が8歳以上向けなので、低年齢向けのプラモデルを組み立ててみました。弊社で女性向けに発売したプラモデルシリーズ“キャッスルクラフトコレクション”の「アナと雪の女王」、子供向けの「妖怪ウォッチ」「ポケットモンスター」のプラモデルなどを組み立てました。
── プラスチックだけでなくシールやペーパークラフトで完成度を上げていますよね?
三澤 はい。ハコルームは4色成型なので素組みでも綺麗に仕上がりますが、シールを貼る箇所もあります。というのは、原作の絵本(「くまのがっこう」)が水彩画なので、紙に印刷したほうが原作に近い色あいを再現できるんです。シールを貼ったり、紙を組み立てることで完成度があがる部分もあります。女の子はシール遊びが大好きなので、リボンで服をアレンジできるよう、細かく工夫しています。口に貼るシールは、失敗しても大丈夫なように3枚ついています。でも、ピタッと綺麗に貼れますから、安心してください。
── 顔が、2種類ついてたりもするんですよね。
三澤 そうなんです。オプションパーツの中に、眠っている顔が付いています。耳も、リボンを付けられるよう、穴の空いたものが付属しています。表情を変えたり、カスタムできる要素をお人形1体の中にも盛り込んでいます。
── 企画がプレイトイ事業部で、製造が静岡のホビーセンターという解釈でいいですか?
三澤 はい、設計・生産がホビーセンターになります。普段は主にガンダムなどのプラモデルを設計している社員が、ハコルームを設計しています。
── ランナー(パーツのついている枠)までクマの形にしたのは、企画側のこだわりですか?
三澤 実は、ホビーセンターの方から「ランナーをキャラクターの形にしたい」と、提案があったんです。1つの金型の中で使わないスペースが出てきてしまうのがもったいない! ということでこういったキャラクターの形のランナーの実現が難しかったそうですが、「女子の心をキャッチするには、やるしかない!」と言っていただけて、実現しました。ですから、このクマの形のランナーは、ちょっと贅沢なんです。