2017年3月25日(土)、「AnimeJapan2017」セミナーステージにて、「DEVILMAN crybaby」原作者・永井豪さんと湯浅政明監督によるトークイベントが開催された。
「デビルマン」は、1972年より「週刊少年マガジン」(講談社)で連載された永井豪さん原作のマンガで、全世界での単行本発行部数は累計5,000万部を記録する大ヒット作品。海外でも高い人気があり、英語圏を始め、イタリア・香港・フランス・韓国など、多数の国で翻訳版が出版されている。これまでテレビアニメ、OVA、実写映画、ゲーム、小説、派生マンガなど、多くのメディアミックスが行われている。
永井豪さんの画業50周年記念作品である「DEVILMAN crybaby」は、「夜は短し歩けよ乙女」(4月7日公開)、「夜明け告げるルーのうた」(5月19日公開)など個性的な作品で知られる湯浅政明監督による新作アニメ。初めて原作コミックのラストまで映像化されるとのこと。なお本作は、ネット配信プラットホーム「Netflix」独占で全世界公開予定だ。
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この日のステージは、会場に駆けつけた大勢のファンの前で、イベント開催に先駆けて発表された「DEVILMAN crybaby」製作発表の裏側や、永井さん、湯浅監督の「デビルマン」に対する熱い思いが、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚紀さんの司会のもとで大いに語られた。
まず原作マンガが描かれた時代背景についてたずねられた永井さんは、「1972年に連載がスタートしました。当時はベトナム戦争とか学生運動のニュースを見ながら描いていました。戦いを眺めながら、それがエスカレートしたらどこまでいくのか、どこかでブレーキをかけないと危ないよ、と危惧しながら描いていた」と述懐。また、「時々、なんで自分がこんなことを描いているんだろう。どこからこの台詞が出てきたんだろうという体験があった」と、まるで何かに取り付かれたように執筆していたことを明かした。
いっぽう、湯浅監督は「原作を読んだのは高校生くらいの時。後半の展開には衝撃を受けたが、当時はまだその奥にあるビックリの正体を知りませんでした」とコメント。そして、「DEVILMAN crybaby」では衝撃を受けたラストシーンについて、自分なりの意味を考え、そこから逆算してストーリーを考えていること。また、舞台を現代にアレンジし、さらに「過去に『デビルマン』という作品があった世界」で物語が描かれるとのこと。一部設定の変更があることがトーク中に明かされたが、永井さんは「それぞれ人には個性があります。その方の力が一番発揮できるのは、その人が好きなように作ることだと思いますから、僕に合わせようとは考えずに存分にやっていただきたい」と湯浅監督にエールを送った。
その他、今春公開予定の湯浅監督の新作アニメ映画「夜は短し歩けよ乙女」、「夜明け告げるルーのうた」の2本をすでに鑑賞したという永井さんは、「めちゃくちゃ面白かった。劇場作品2本を見て、この監督は『デビルマン』のシュールな世界観を作れる監督だと確信しました」と太鼓判。さらにマンガ版「デビルマン」の重要キャラ・飛鳥了について、湯浅監督は「本作は主人公・不動明と飛鳥了のバディものではあると思うけど、たぶん今までの映像作品ではちゃんと了は描かれていなかった。『DEVILMAN crybaby』は明の物語だが、今回は了の物語としても作っています」と語ると、永井さんも「自分もマンガを描いている時、後半になって了が主人公だったのだと気づきました。了をはずすと話が進まなくなるので、一度殺したのを生き返らせたんです」とコメント。実は、飛鳥了について両者が語り合ったのは今回が初めてだったそうだが、何も語らずとも湯浅監督と永井さんは「デビルマン」の核心部分でのコンセンサスがとれていたことが判明。これには永井さんも嬉しそうな表情を浮かべた。
ちなみに本作はおよそ1クール程度のボリュームの作品になること、配信時期は2018年の初頭頃になることなどが、このステージで明かされた。また、本作はテレビと違い放送枠の制限がない配信作品となるため、「(1話の永さが)40分でも50分でもいいと言われています。心置きなく作れる環境だ」と湯浅監督はコメント。さらにバイオレンスシーンやエロティックなシーンについても、規制の少ない配信という環境を生かして、限界まで挑戦するとのこと。そしてサブタイトルの「crybaby」がキーワードになることが語られ、来場者の期待を煽った。
終始なごやかな雰囲気に包まれながらイベントは終演。最後に永井さんは「早く来年にならないかなと思っています」と、いち視聴者として「DEVILMAN crybaby」への期待を語り、閉幕となった。