【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2016年秋アニメ総括レビュー! 「競女!!!!!!!!」「舟を編む」など、5作品を紹介!!

2016年を締めくくる秋アニメを総括レビュー。週刊少年サンデー連載の「競女!!!!!!!!」、オリジナルのSF冒険活劇「フリップフラッパーズ」、忍たまが宇宙を駆ける「忍たま乱太郎の宇宙大冒険 with コズミックフロント NEXT」、本屋大賞受賞作「舟を編む」、WEBコミック原作のショートアニメ「奇異太郎少年の妖怪絵日記」をラインアップ!

競女!!!!!!!!

尻と胸を使って闘う公営ギャンブル「競女」の養成学校に通う主人公・神無のぞみが、ライバルたちと一緒にプロを目指すスポ根アニメ。胸に比べて尻をテーマにした作品が少ないのは尻アニメ特有の困難さに由来する。我々は尻をできる限り近くで見たいと切に願っているが、あまりにカメラが近づき過ぎると誰の尻だかわからなくなる。これでは桃尻が映ったとしても、男の尻である可能性を否定できない。そのぼんやりとした不安を打ち消すためには、尻と同時に顔を映すことが求められるが、そこで解剖学的な問題が立ちはだかる。胸と異なり尻は顔の反対側についているのだ。「頭隠して尻隠さず」ということわざが示すように、顔と尻は本来ならば相並ぶことのない二律背反の存在なのである。
本作では腰をひねらせたり、画面を分割させたり、カメラを回り込ませたりと、あらゆる手段を駆使して、同一カット内で顔と尻の共存を図る。そして最終話「熱戦終尻!!!!」で仲間の「乳魂」によって力を引き出された神無のぞみは、その瞳に胸を宿すことになる。尻、顔、胸を同時に映す術を得た彼女のパワーは物語のクライマックスにふさわしい筆致で描かれている。

フリップフラッパーズ

中学2年生のココナが謎の組織「フリップフラップ」に所属する少女パピカと出会い、どんな願いも叶えるミミの欠片を探すため、異空間「ピュアイリュージョン」へ旅立つ変身ヒロインアニメ。ピュアイリュージョンの世界観はエピソードごとに異なっており、砂漠の荒野を巡るバトルアクション、ミステリアスな女学校を舞台にした学園ホラー、過去を追憶するノスタルジックな青春ドラマ、ビルより巨大なメカに乗り込むSFロボットなどもりだくさん。各クリエイターが競うかのように個性を発揮している。
カラーリングも特徴的で、ときにはビビッドに、ときにはモノクロで、キャラクターと風景を彩っていく。現実と異世界を行き来する物語でありながら混乱しないのは、この巧みな色使いゆえだろう。繰り返すことを意識させるストーリー構成も、バンクと切り離せない変身ヒロインというジャンルにマッチしている。

舟を編む

出版社の辞書編集部員が中型国語辞典「大渡海」の編纂に心血を注ぐヒューマンドラマ。十数年の歳月を重ねて辞書作りにはげむ主人公・馬締光也。それに対して下宿先の大家・タケおばあさんは、孫娘・林香具矢を結婚させるために暗躍する。出版社の正社員で真面目な性格の馬締は格好のターゲットだ。彼を「みっちゃん」とアダ名で呼ぶように孫娘を仕向けるなど、キューピッド役に精を出す。
第6話の2人が結ばれるシーンでは光源の月は描かれず、彼らの関係が「竹取物語」のような結末にはならないことが示唆される。するとタケさんは自らの役目を終えたように表舞台から姿を消し、次に現われたときはすでに亡くなっている。そういえば紙の辞書を使わなくなったのと同じように、やたらお見合いを勧めてくるおばちゃんも世の中からいなくなっている事実に気づく。何か大切なものを失ってしまったのではないかと心を揺さぶられる一作。

奇異太郎少年の妖怪絵日記

強い霊力を持った少年・奇異太郎が座敷童子のすずを筆頭に、妖狐、雪女、雪ん子などバラエティ豊かな妖怪たちと少し不思議な日常を過ごすショートコメディ。原作のWEBコミックは1ページ1コマという特殊なコマ割りとなっており、絵日記のようなスタイルで表現されている。
アニメ版では各エピソードごとに多彩なスタイルで映像化がなされた。第1話「妖怪大戦争」では大量の妖怪たちが合戦を繰り広げるアクションを披露。第4話「経立と狭間の管理人」ではハムスターの剣劇を描き、第7話「手の目」では原作にないパロディを盛り込んでポーカー勝負を表現。各話でエンディングテーマが異なっていたり、本編には妖怪解説が流れたりと、細部にまで楽しい仕掛けで見る者を飽きさせない。

忍たま乱太郎の宇宙大冒険 with コズミックフロント NEXT

NHKの長寿アニメ「忍たま乱太郎」と科学番組「コズミックフロント NEXT」がコラボしたスペシャルアニメ。年末には第2弾として「天の川」編と「ブラックホール」編がオンエアされた。乱太郎、きり丸、しんべヱの3人組がゲストキャラクターとともに地球を飛び出して、宇宙の謎を解き明かしていく。NASAの資料映像を見ながら星や天体について楽しく学べるだけでなく、アニメとしても出色の出来映えである。
「ブラックホール」編はその題材ゆえにホラーテイストの仕上がりだ。ブラックホールに吸い込まれた乱太郎たちの体が引き延ばされ、うどんになってしまうというレギュラー放送では見られないSFチックなエピソードとなった。宇宙船はCGで描かれており、合体シーンまで盛り込まれているのもポイント。ゲスト声優には沢城みゆき、三木眞一郎、植田佳奈と豪華なメンバーが揃った。

(文/高橋克則)