「機動戦士ガンダム サンダーボルト」トークショーのレポートが到着した。
「機動戦士ガンダム サンダーボルト」は、太田垣康男さんがビッグコミックスペリオールで連載中のマンガを原作としたアニメ作品。「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」を手掛けたサンライズ第1スタジオが制作を、「革命機ヴァルヴレイヴ」の松尾衡さんが監督・脚本を担当。2015年12月~配信中の全4話に新作カットを加えたディレクターズカット版「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」が6月25日~7月8日の2週間限定で劇場上映される。
6月12日に「THE ORIGIN」「サンダーボルト」「ガンダムUC」ほか最新作を中心にしたイベント「ガンダム LIVE EXPO~ジオンの世紀~」が開催され、池田秀一さんと潘めぐみさんによる朗読、菊地成孔さんと松尾衡監督のトークショーに加えて、森口博子さん、米倉千尋さん、MIQさん、石田匠さん、ICI a.k.a.市川愛さん、Aimerさんによるライブが行われた。このイベントは福井晴敏さん(「機動戦士ガンダムUC」ストーリー)×隅沢克之さん(「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」脚本)が構成を務め、ガンダムの歴史をなぞるように各アーティストがガンダムの主題歌を披露。昼/夜の部に集まった約6000人のガンダムファンを盛り上げた。
以下、「サンダーボルト」の音楽を担当した菊地成孔さんと松尾衡監督によるトークショーのレポート。
・アニメを受けた経緯は
菊地:仕事の依頼をいただきまして、最初はきっと何かの事情でジャズが必要なのかなと思って(笑)。でも漫画原作を読んだら、主人公のうち一人がジャズが好きで、もう一人がポップスが好きな設定で、ものすごい書き込まれていたし、実際イラク戦争などで兵隊たちが耳にイヤホンして音楽聞いて、自分をアゲながら銃でたくさん人を撃っていて、サンダーボルトは宇宙でも同じだと、そういうところもリアルに描いていてすごいなと思ったからです。
あっ! 今回サントラも作ったので6月15日にでます!(脇に隠したCDを取り出して)ジオン公国に宣伝はするなって言われてるんですけど(笑)。よろしくお願いいたします!
・そんな菊地さんの起用理由は
松尾:ジャズ界に文句の言われない人なので(笑)
・サンダーボルトをやってみて
菊地:本当にすいません。私はガンダムだけじゃなく一切アニメも観ないし、漫画も読まないし、ゲームもしませんし、ネットもやらないんです。なので出来がどうかってわからないんですけど、監督はじめ素晴らしいスタッフさんばかりで、非常によくしていただきました。やはり世界的なコンテンツなので違うなとは思いました。映画と同じで映像と音楽を合わせた時の感動はすごかったですね。
・菊地さんにどんな注文をされたのか
松尾:最初は劇伴をお願いしたいっていう話だったんですが、菊地さんの方から、主人公の二人(イオ、ダリル)が聞いている曲だけで構成しても十分じゃないかとご提案をいただきまして、想定していた曲とは少し違うけど例えばこんな感じでどうかとジャズの参考になる曲をいくつか聞いて、これなら戦闘シーンでも、日常のシーンでも全然流せるなと思って、これならばと二人が聞いてる曲だけで構成することには大賛成でした。それが結果的にはいいものになったなと思いましたね。
・2話以降の音付けのディレクションについて
菊地:我々、普通の音楽家は音楽を作って納品したら終わりで、あとは整音の仕事なんですが、1話終わった後に、松尾監督から、いかがですか?って連絡が届いて、ここはもう少しこうした方がいいんじゃないですかねって送ったんです。そしたら2話以降その意見反映してやりたいので、音貼ってくださいって言われて(笑)。そもそも整音の方がいなくて松尾さんが自らやられていたので(笑)。
松尾:それはね、サンダーボルトには小形っていうネジが外れたプロデューサーがいまして、僕もジャズは詳しくないけど、音貼れって言われて、それで1話をおっかなびっくり貼って、これは菊地さんに観てもらおうよと。後から怒られるのも嫌だったので(笑)。
菊地:怒らないですよ(笑)。なので2話目以降は松尾さんと一緒に貼らせていただきました。
・音楽メンバーについて
菊地:ちょうど大西順子というジャズ界で知らない人はいないというレジェンダリーな方のアルバムプロデュースをしていまして、言葉は悪いですが、大西順子さんに、ガンダムの話がきまして、ジャズで伴奏したいみたいなんですがバイトやりませんか?って(笑)、そしたらやるやるって言ってくれて、ジャズミュージシャンはあまりアニメとか観ないんですけど、やっぱりガンダムって名前は皆知ってるんですよね。レジェンダリーなプレイヤーも入って、幸運な曲になりましたね。
松尾:大西さんは収録の時にやっぱりドッキリじゃないかって言ってましたね(笑)。
・この日披露したICI a.k.a.市川愛の「あなたのお相手」について
菊地:サンダーボルトには、いわゆるアニソン的な主題歌がなくて、たとえば主人公のダリルが聞く曲もオールディーズっていう50年代のアメリカの曲が7~8曲あるんです。なのでボーカリストも6人体制で楽曲もいっぱい入っています。普段はフィメールラッパーで、今回は特別にサンダーボルトに参加していただいたICIの「あなたのお相手」はその中で一番こういうお祭りに相応しいアゲアゲな曲だと思います。
・最後に
菊地:クールジャパンかジャパンクールかもわからない人間が皆さまにメッセージするのもおこがましいんですけども、良い作品になっていると思います。特にイベント上映版「DECEMBER SKY」もよろしくお願いします!
松尾:上井草にあるサンライズの第一スタジオ、どこをどうとったらクールなのかさっぱりわかりませんけども(笑)、ただそんなとこでみんなが死ぬ思いで作った作品を、少しでも多くの人に観て頂き、宇宙世紀に仲間入りしてやってもいいんじゃないのって思ってもらえたら、上井草の方にむかって良かったよと言ってあげてください。これからもどうぞよろしくお願いいたします。