TRIGGERの今石洋之監督によるTVアニメ「宇宙パトロールルル子」。ハチャメチャなストーリーの後に流れるメロウなエンディングテーマ「Pipo Password」は、ふわふわとしたキュートなラブソングだ。この曲は、かつて、☆Taku Takahashiとともに「パンティ&ストッキング with ガーターベルト」の音楽を手がけたTeddyLoidと、「ユリ熊嵐」のオープニングテーマ「あの森で待ってる」を歌ったボンジュール鈴木の共作。ともにフランスの音楽に精通する2人が、「ルル子」のピュアな魅力をフィーチャーした、上品な曲を作り上げた。
直接会ったのは、楽曲の制作が終わってからでした
──TeddyLoidさんは、かつて☆Taku Takahashiさんと一緒に、今石洋之監督の「パンティ&ストッキング with ガーターベルト」のサウンドトラックを手がけられています。今回はそれに続く、今石作品への参加ですね。
TeddyLoid 今回、エンディングテーマのお話をいただけてうれしかったですね。今石監督は、クウォリティ高い上に実は内容はハチャメチャ、という作品を作るのがうまい人という印象で、大好きなんです。一度ハマったら逃れられない魅力が、今石作品にはあると思います。
ボンジュール鈴木 私も、「キルラキル」とか、大好きでした。テンポ感がクセになりますよね。
──「宇宙パトロールルル子」も、まさに“ハチャメチャ”な作品になっています。エンディングテーマを作るにあたって、監督からは、どのようなオファーがあったのでしょうか?
TeddyLoid メロウな、ゆったりとした曲にしてほしいというリクエストを頂きました。僕は普段、激しめのダンスミュージックを作っているので、メロウな歌モノをどうやって作ろうかなと思った時に思い浮かんだのが、ボンジュール鈴木さんのふわりとした歌声だったんです。
──お2人は、以前からお知り合いだったんですか?
TeddyLoid 共通の知り合いはいるんですが、ボンジュールさんとは今まで接点はありませんでした。僕は、「ユリ熊嵐」のオープニングテーマ「あの森で待ってる」で知って、いいなと思って。彼女の作品をいろいろと聴いていったら、フレンチポップス系の音楽をやられていて、曲作りからレコーディング、マスタリングまですべて自分1人で行っているということを知ったんです。僕もフレンチエレクトロをやっていて、1人で制作しているので共通点が多くて。それに、作られている音楽にすごく世界観~ストーリー性を感じるんですよね。
ボンジュール鈴木 私もTeddyLoidさんの曲を以前から知っていました。「パンスト」は見ていましたし、いろいろなアーティストさんとお仕事をされているのを聴いて、すごい方だなと。だから、Teddyさんに最初にお目にかかった時は、すごく緊張してしまいました。
──制作前に、顔合わせをしたんですか?
TeddyLoid いや、制作中はまったく会っていないんです。ずっとメールのやり取りでしたから。最初にお会いしたのは、制作が終わって、今石監督と3人で「ルル子」のラジオ番組に出演した時でした。
ボンジュール鈴木 最初にいただいたご連絡は、Twitterのダイレクトメッセージだったんです。お引き受けすると、すぐにトラック(楽曲)が送られてきました。
TeddyLoid 宇宙の浮遊感を出したいなと思って、ボンジュールさんにお願いすると同時に、僕もトラック作りを始めていきました。今回の曲は、完成まで早かったですね。オファーを受けてから2週間くらいですべての作業が終わりました。
ボンジュール鈴木 あまりの早さにびっくりしました(笑)。
ネット検索のことを考えて、タイトルを決めました
──お2人のやり取りが、すごくスムーズに進んだということですね。Teddyさんのトラックを受け取って、ボンジュールさんが次にしたことは何でしょう?
ボンジュール鈴木 作詞です。
TeddyLoid トラックと一緒に、歌詞のイメージをお伝えしました。ルル子が宇宙を浮遊しながら歌っているような曲とか、ノヴァくんとの恋愛ストーリーとか、ざっくりとした言葉だけをお伝えして、あとはボンジュールさんに自由にふくらませていただければいいなと。
ボンジュール鈴木 アニメの台本も送っていただいたので、それを何度も読んで、インスピレーションを得ました。ルル子はとにかくかわいい女の子でしたし、初恋のピュアなイメージと、恋がうまくいくかどうかわからないキュンとする感じを、宇宙とからめて書きたいなと思いました。まずは歌詞を箇条書きにして、それをTeddyさんに確認していただいて、何度かメールのやり取りをしながら作り上げていきました。
TeddyLoid ストライクな感じの歌詞になったと思います。今石監督や若林さん(若林広海・クリエイティブディレクター)も、作品に合っているとおっしゃっていました。
──ボンジュールさんが特に作詞でこだわったところは、どこでしょうか?
ボンジュール鈴木 テーマのひとつが初恋なので、かわいい世界観にしたいと思いました。私の曲には、かわいい女の子の歌でありながら、裏側には別の意味が隠れているというような、ダブルミーニングの歌詞が多いんですけど、今回は裏のないものにしたいなと。でも、ちょっとだけダブルミーニングが入っていたりします。
──そこは、リスナーに歌詞をじっくり味わって感じていただきたいですね。歌詞とトラックができたら、次の作業はボーカル録りです。
TeddyLoid ボーカルは、ボンジュールさんの自宅で、セルフで録っていただきました。
ボンジュール鈴木 Teddyさんのトラックがものすごくかっこいいので、それに合う歌い方を試行錯誤しました。自分も宇宙に飛んじゃうようなイメージで歌ってみようかなとか、マイクはこれが合うかなとか、いろいろ考えて録ったデモテイクを、Teddyさんに確認していただいて、本番レコーディングという流れでした。
TeddyLoid ボンジュールさんのデモの完成度がすごく高くて。このままでもいけるくらいでした。
──本番のボーカル録りも、ボンジュールさんが1人でやられたんですか?
ボンジュール鈴木 はい。
TeddyLoid 慣れている環境のほうが絶対にいいテイクが録れると思って、レコーディングはお任せしました。4テイクくらい録っていただいたものを受け取って、それを素材に僕がエディットしていくという作り方ですね。ハモリも、彼女が作ってくれたものに加えて、こちらでまた重ねたりしています。
ボンジュール鈴木 とてもステキな世界観に仕上げていただけて、うれしかったです。
TeddyLoid ボンジュールさんは、声がいいのはもちろんですけど、録り方も、楽曲へのアプローチも素晴らしくて。ここはこう歌うんだと、ハッとさせられるところがたくさんありました。
ボンジュール鈴木 Teddyさんのミックス素晴らしかったです。私の声って、ミックスでけっこう変わってしまうのですが、TeddyLoidさんはフレンチエレクトロなども作っていらっしゃったり、いろいろな音楽の知識をたくさん持っていらっしゃるので、自分の声なのに聴きながらうっとりしちゃうような心地いいミックスに仕上げてくださってとてもうれしかったです。
TeddyLoid ボンジュールさんの声は倍音が豊かなので、エフェクトがかかりにくいんです。オリジナリティがあって、そこが魅力なんですよね。
ボンジュール鈴木 私は、フランス語の発音で日本語の歌詞を歌っているんです。ですから、普通のウィスパーボイスよりも倍音が多くなって、ミックスによって声が聞こえなくなっちゃうこともあるんですけど、Teddyさんはミックスのセンスもすごいなぁと思いました。
──「Pipo Password」というタイトルは、どうやって決めたんでしょう?
ボンジュール鈴木 タイトルについては、LINEでやり取りしたんです。
TeddyLoid そうでしたね(笑)。「パスワードという言葉が歌詞の中にあるので、それでいかがですか?」とボンジュールさんに提案したら、「ネットで検索した時に、他の候補が出ないタイトルにしたい」と。なるほど、と思いました。
ボンジュール鈴木 「PiPoPa☆」という言葉も歌詞に入っているので、それを付け足して、「Pipo Password」にしようということになりました。
──ほかにない、面白い音感のタイトルだと思います。