「今見ても、やっぱりいいわー!」
「なんでそんなに女性に受けたの?」
おもしろいものには理由(ワケ)がある! 女性アニメファンの心をつかんでヒットした懐かしの作品を、女性アニメライターが振り返ります。
第2回は、ミニ四駆ブーム再燃で多くの人に懐かしまれている「爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP」(1997年放送)。
ミニ四駆が盛り上がり、第三次ブーム到来か!? と言われていますね。
ミニ四駆とは、模型・プラモデルメーカーのタミヤが発売している、小型のモーターを搭載し、乾電池を動力源として走る、四輪駆動の自動車模型(プラモデル)。2012年に発売30周年を迎えた息の長い人気シリーズです。
ミニ四駆は、「ダッシュ!四駆郎」のアニメが放送された1989年前後に第一次ブームが。そして「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」のアニメが放送された1996~1998年を中心に、第二次ブームが起こりました。この「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」が当時、大きいお姉さんたちにも大人気! アニメからミニ四駆に入り、街角レースでミニ四駆を走らせた大人のファンもいました。
3年続いたシリーズのうち、一番人気が盛り上がった2年目のシリーズ「爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP」を振り返ります。
ミニ四駆が大好きな星馬兄弟と、個性的なTRFビクトリーズの仲間たち
実在する商品を劇中で子どもたちが楽しむホビーアニメで、原作コミックは小学館の「コロコロコミック」連載。どう見ても小さな子ども向けの内容ですが、これがなかなか、大きいお姉さんたちにもおもしろかったんですね。
1年目にじわじわと作品人気が盛り上がった理由は、主にふたつ。登場キャラクターたちが個性的かつ魅力的で楽しかったこと。もうひとつは、レースを中心としたドラマが熱く爽やかだったことです。
「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」の主人公は、ミニ四駆が大好きな1つ違いの兄弟、星馬烈(せいばれつ)と星馬豪(せいばごー)です。ふたり合わせてレツ&ゴー。この兄弟の性格が対照的です。
兄貴の烈は、思慮深くて責任感の強いしっかり者。細かい調整を施した高速コーナリング重視のマシン製作が得意で、「コーナリングの貴公子」の異名を持っています(小学生ですが)。
いつもは落ち着いていて、突っ走りがちな弟をたしなめる「お兄ちゃん」。そんな烈が、レースで熱い闘志を垣間見せ、あるいは弟とのケンカでむっとなり、子どもらしさを見せるのが、かわいくてたまりません。
いっぽう、弟の豪はヤンチャで単純で直情径行。走りも性格そのままに単純明解、速さと勢いとパワーを追求します。「かっ飛べ、マグナーム!」が口癖で、ストレートでのスピード重視のマシン製作が得意です。
何かというとすぐに怒ったりケンカしたりヘマをしたりで、豪が行くところにトラブルあり! もはやどんな問題を起こしても彼らしく、バカな子ほどかわいいという気分にさせられます。
1年目の「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」で星馬兄弟と熱い戦いを繰り広げたライバルたちが、2年目の「WGP編」では烈と豪とともに「TRFビクトリーズ」という5人のチームを組み、日本代表として世界各国の代表チームと戦うことになります。
野性的で寡黙な一匹狼で、いざというときには頼りになる、鷹羽リョウ。三国コンツェルンのわがままおぼっちゃまで、ときどきズルいけれど努力家の一面もある、三国藤吉。相手のマシンを壊してでも勝利するバトルレーシング主義の大神博士に育てられたが、ミニ四駆レースの楽しさに目覚めて改心した温厚な少年、J(ジェイ)。さらにマスコット的な存在として、リョウの弟、鷹羽二郎丸が加わります。
キャラづけの濃いメンバーでした。藤吉は「~でゲス!」、二郎丸は「あんちゃん、~ダス!」が口癖で、「なんで鷹羽兄弟は弟だけなまってるのか?」とファンにツッコまれたものです。
「WGP(World Grand Prix、ワールドグランプリ)編」は、各地を転戦して、世界各国の代表チームとチーム戦を行うというもの。個人で突っ走ればよかった1年目とは異なり、チームでの作成や連携、フォーメーション走行が必要となって、レースに求められる走りも一変。1年目では「なんだかんだいって、なかなか勝てない烈」「なんだかんだいって、最後は強引に勝つ豪」というイメージがあったのが、チーム戦に変わって「使える」度合いが逆転した、2年目冒頭はおもしろかったです。
レース展開に変化が出たうえ、当初相性ちぐはぐだったTRFビクトリーズの5人が、キャプテンの烈、エースの豪を中心に、次第に一致団結していくドラマは、熱く、楽しく、感慨深いものがありました。
魅力的なユニークな、世界のイケメンライバルたち
大神軍団のバトルレーサーの沖田カイ、近藤ゲン、土方レイと戦った1年目の無印シリーズでじわじわと盛り上がった作品人気は、2年目の「WGP編」でブレイクしました。
ライバルである世界各国の代表チームが個性的かつ魅力的だったのが、大きな力だったといえるでしょう。特に人気が高かったのが、アメリカ、イタリア、ドイツの3チームでした。
アメリカ代表チームは「NAアストロレンジャーズ」。メンバーはNASAの研修生のエリートたちで、チームワークがよく、分析して作戦を立案し、遂行する能力にすぐれています。最初は、レベルの低い日本チームを見下すなどイヤミな言動もありましたが、やがて互いを認め、プライベートでもつきあいのあるよきライバルになります。
チームリーダーは、ゴーグルで目元を隠したブレット・アスティア。「クール」と「パーフェクト」が口癖なのに、完璧主義が行きすぎて詰めが甘く、状況の変化に弱いところに愛嬌がありました。紅一点のジョーは勝気な性格ですが、ジェットスキーレースでリョウに助けられて以来、彼を意識して女の子らしい一面を見せ、話に彩りを添えていました。
イタリア代表チームは「ロッソストラーダ」。メンバーは、全員スラム育ちの不良で勝利に貪欲。外面のよさで周囲を騙しつつ、マシンの仕込みナイフで対戦相手のマシンを傷つけるバトルレースを展開する悪役として登場しました。いち早くその事実に豪が気づいたのに、日頃の信頼のなさが裏目に出て、仲間に信じてもらえるまでに時間がかかったのは、ある意味自業自得とはいえ、ちょっと気の毒でした。
チームリーダーは、カルロ・セレーニ。一見暴力的な少年に見えますが、バトルレース抜きでも高い実力とセンス、頭の良さを持っています。家族がいなくて孤独で、雨が降ると嫌な思い出が蘇るという陰影を背負い、ワルに弱い女子の心をキュンとさせました。
ドイツ代表チームは「アイゼンヴォルフ」。ヨーロッパ選手権のチャンピオンでもあり、WGPとの2冠をねらう王者のチームです。序盤で存在感が薄かったのは二軍が参加していたからで、一軍到着以後の活躍はめざましいものでした。
チームリーダーは、ミハエル・フリードリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー。「不敗神話」を持つ無邪気な天才で、メンバー最年少ながらそのカリスマ性でチームを統率します。チームメイトでミハエルを支えるシュミットとエーリッヒのイケメンコンビが、女性ファンに大人気でした。
クール、ワル、天才と個性豊かな面々ですが、みんな烈&豪と年の近い小学高学年というのはツッコミどころです。カッコつけてるけれど、話が進むにつれてTRFビクトリーズの面々との交流が進み、それぞれの休日の素顔や子どもらしい表情も見せるようになりました。
WGP編のクライマックスが感無量
クライマックスでは、予選レースを勝ち抜いた日本、アメリカ、ドイツ、イタリアと、上位4カ国の代表チームがファイナルレースに挑みます。このファイナルレースが実に胸アツです。
リーダーシップに悩んだ烈が復活したTRFビクトリーズは、当初のチームワークの悪さはどこへやら、一丸となって優勝を目指します。メンタルが強くなり、立派なリーダーに成長した烈、カッ飛びがパワーアップしたうえ、フォーメーション走行やチームプレーもこなすようになった豪の姿に、ファンもしみじみさせられます。
ファイナルレースの舞台は、東京から箱根までを3日間かけて往復する箱根駅伝コース。駅伝のTV中継でおなじみの景色の中を、ミニ四駆と烈&豪たちがリアルな自動車並みのスピードで駆け抜けていくレースは、迫力とリアリティ満点で、熱く盛り上がりました!
最後の大舞台には、さまざまなドラマが用意されました。固さのとれたNAアストロレンジャーズは、プライドをかけて、今度こそ完璧なレースをと意気込みます。バトルレースがばれてペナルティをくらったロッソストラーダは、全力のカルロがバトルなしでも恐ろしく強い底力を見せます。いっぽう、アイゼンヴォルフの不敗の天才ミハエルが初めての敗北を喫し、調子を崩すというアクシデントも待っていました。
2日目にカルロが奇跡的な追い上げを見せ、初めて自分の力を出し尽くしてバトルなしで勝利し、レースの高揚感に拳をつきあげたシーンは、クライマックス一の名場面でした。
さらにレースはもつれ、感動的にファイナルレースはゴールを迎えますが、豪は止まらず、そのまま愛機ビートマグナムと走りつづけます。まるで終わらない物語のように。
忍者のように壁走りするミニ四駆や、なぜか四国弁をしゃべるオーストラリア代表チームなど、「それはないだろ!?」と笑ってしまう、子どもっぽいハッタリのきいた世界観の中で、どこまでも純粋にレースを楽しむ烈や豪、小さなイケメンたちの活躍を見ているうちに、いつのまにか彼らの熱情に引き込まれ、ミニ四駆も好きになるという、大きな幸せパワーにあふれた「レースアニメ」でした。
ファンの評価の高かった「映画 爆走兄弟レッツ&ゴー!! WGP 暴走ミニ四駆大追跡!」は、WGP編での1エピソードという位置付け。TRFビクトリーズの活躍が中心ですが、世界のライバルたちもチラリと登場。クオリティの高い映像で、スケールの大きなレースが楽しめるので、初めての人にもおすすめします。
(C)こしたてつひろ/小学館・ShoPro
(文・やまゆー)