TBS、BS11にて放送中のTVアニメ「冰剣の魔術師が世界を統べる」。
原作は御子柴奈々さんによるライトノベルで、コミカライズ版も刊行中の「冰剣の魔術師が世界を統べる 世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する」。世界最強とうたわれる“冰剣(ひょうけん)の魔術師”、レイ=ホワイトを主人公とした学園ファンタジーだ。
強大すぎる自身の力に苦悩し、深い心の傷と共に戦場から姿を消したレイは、正体を隠して、エリート魔術師が集まる<アーノルド魔術学院>に入学。貴族の魔術師から差別の眼差しを向けられながらも、かけがえのない仲間たちとともに、数々の試練や陰謀に立ち向かう。
そんな本作のメインキャストに、アキバ総研がインタビューを行った。
今回は、レイと同じく<アーノルド魔術学院>の生徒で、三大貴族のひとつであるローズ家の令嬢・アメリア=ローズ役の佐伯伊織さんと、レイやアメリアと同じクラスになった小柄なハーフエルフの少女・エリサ=グリフィス役の春村奈々さんにお話をうかがった。
アメリアもエリサも声を聴いてピッタリだと思いました
――原作のライトノベルや漫画、そして今回の台本をご覧になった感想からお聞かせください。
佐伯 台本を読んで、原作よりもちょっと早めに登場するキャラクターがいるなと思いました。そこもアニメの魅力じゃないかなと。キャラクターたちが主人公とどう関わっていくかはぜひ楽しみにしてもらいたいです。
春村 ライトノベルも漫画もアニメもちょっとずつテイストが違っていて、アニメはライトノベルと漫画の中間という印象がありました。同じ物語ではありますが、どこから見ても楽しめると思います。アニメでは魔術の見栄えやエフェクトがやっぱりきれいですね。
――魔術師が出てくる作品も主人公が最強な作品も多数ある中で、この作品ならではの魅力はどこだと感じましたか?
佐伯 1人ひとりのストーリーがすごくいいなと思いました。しかも、女性がいっぱい出てくる作品の中では、主人公との“友情”をすごく大切にしていて。恋愛要素が多少あったとしても、基本は主人公と仲良くなっていくお話なんです。そこが個人的には好きですね。
春村 魔術師なので難しい言葉も出てきますけど、真面目すぎないというか、コミカルなギャグシーンもあって飽きないなと感じました。そのバランスが絶妙だなって。
佐伯伊織さん
――オーディションでは、今の役のみを受けたのでしょうか?
佐伯 私はエリサも(オーディション用のテープを)録りました。
春村 そうなんですね! 私はエリサの1役のみでした。
――佐伯さんはエリサも録ったとのことですが、春村さんのエリサの声を聴いてみていかがでしたか?
佐伯 自分の中のエリサにすごく近くてピッタリだと思いました。最初のアフレコでエリサの声を聞いたときに「そうそう、それそれ!」って。
春村 え〜! 本当ですか!?
佐伯 春村さんのかわいくてちょっとハスキーなところがすごく好きで、本当に思った通りだなってなりましたね。
春村 ありがとうございます。横で聞いていて嬉しくて鳥肌が(笑)。そんなことおっしゃってもらえると思わなかったので、大変光栄です。でも、佐伯さんがエリサだった世界線もちょっと気になっちゃいますね(笑)。
佐伯 いやいや、エリサはやっぱり春村さんですよ。
――逆に、春村さんは佐伯さんのアメリアの声を聞いていかがでしたか?
春村 私も同じなんですけど、最初に聴いて「アメリアだ!」となりました。アフレコを重ねていくと、より確信を持てたというか、本当に選ばれるべくして選ばれたんだなと思いました。アメリアの芯が強くて努力家なところも、ちょっとレイに翻弄されてあわあわするところも、完璧に演じられていて。それってたぶん佐伯さんが今まで積み上げてきたものがあるからこそ出せるんだろうなって、聞いていて思いました。
佐伯 (恥ずかしくて)もにょもにょしちゃいますね(笑)。とても光栄ですけど。
演じるうえでのアプローチは対照的
――ご自身のキャラクターの役作りに関してもお聞きします。どのようなことを意識して演じ、ディレクションを受けてアメリアやエリサを作り上げたのでしょうか?
佐伯 アメリアは「完璧」という言葉がピッタリだと思っていて、その完璧さをどうやって表現しようかなとずっと思っていました。特に彼女の隙のなさをすごく出したくて。自分の中で“演じたいアメリア”があったんですね。それをテープオーディションのときにやって受かることができたので、アフレコでも完璧さや真面目さ、隙のなさは残しつつ、「私が考えるアメリアはこうなんだ」という感じで演じさせていただきました。
――完璧さのいっぽうで、かわいらしい面もありますよね。
佐伯 そうなんですよ。彼女は完璧に見えるけど、実はそうじゃない子なので(笑)。でも、そうじゃない部分はあまり考えすぎずに、真面目に隙のない方を意識して、あとは自然体で演じようと思いました。
――真面目で隙のない部分があるからこそ、そうじゃないところでのかわいさが引き立つと。
佐伯 そういう感じでしたね。
――エリサはいかがですか?
春村 私は、佐伯さんがおっしゃっていた役作りとは結構違っていて。ライトノベルを基準にして「エリサはこのシーンでこう思ったであろうから、それを素直にやろう」という意識でしたね。真面目ですごく引っ込み思案な子ですから、自分がライトノベルから受け取ったままを出せばいいかなと思いつつ演じさせていただきました。
――自分なりのエリサにしようという意識ではなく、原作で受けたものを表現しようと。
春村 はい。そのまま声に出して演じようと心がけました。
――2人のアプローチの違いは面白いですね。
春村 私もビックリしました。もちろんお互いのよさはあると思うんですけど。
――先ほどアメリアのことを完璧な女性だと話していましたが、2人が考える“完璧な女性”とはどういう女性でしょうか?
佐伯 そうですね……顔がよくて、頭もよくて、スタイルもよくて、性格もよくて……かな(笑)。すべてが人の理想に近いというか、神に近いというか。
春村 私はアイドルが好きなので女性を見る機会は結構多いんですけど、“自分に妥協しない人”かなと思います。
佐伯 あっ……。
春村 え? どうかしましたか?
佐伯 いや、私の答えが薄っぺらいなと思って(笑)。
春村 そんなことないですよ(笑)。結局、妥協しない人が、佐伯さんのおっしゃるように顔もスタイルもよくなるから、努力の結果だと思うんですよね。
佐伯 めっちゃフォローしてくださってありがとうございます。
いきなり褒められることや、筋肉についても意見は真逆!?
――本作の主人公である、榎木淳弥さんが演じるレイの印象はいかがですか?
佐伯 話が進むにつれて、かなりはっちゃけていたなって印象ですね。
春村 そうですね。
佐伯 レイって淡々としている子ではあるんですけど、その中でも榎木さんはアドリブとかちょいちょい入れてくるんですよ。それが面白かったです。
――今回、榎木さんにもインタビューしているのですが、本人はいろいろ考えてどちらかというと論理的に、理詰めでやっていたと話していました。
佐伯 そうなんですね。理詰めではあるんでしょうけど、世界感を壊さない範囲内で楽しく演じられているのかなと思いました。
春村 私は、最初に榎木さんのレイくんを聞いたとき、原作を読んで思っていたイメージとは違ったんですよ。淡々なキャラクターではありますが、淡々すぎないかな?と思って。でも、物語が進むにつれて、榎木さんにしかできないんだなとも感じました。アニメを見ていただくとわかりますが、のちのち出てくるお師匠があってこその、淡々としたところがあるわけで。そこまで考えて演じられていたんだとしたら、榎木さんに足を向けて眠れないです。
――淡々とした、アニメ的でない声の出し方はかなり意識したと話していましたから、淡々すぎると感じたぐらいであれば、榎木さんの狙い通りだったのかもしれないですね。
春村 淡白な部分があるからこそ、コミカルな部分がいっそう映えますからね。
佐伯 確かに。でも私はあの突き抜けた演技が好きです(笑)。なんか、このキャラを極めているなと思いました。
――ちなみに、レイって会った女性を淡々と褒めるじゃないですか。実際にいきなり男性から「かわいいですね」とか「素敵だね」とか言われたら、2人はどうしますか?
春村 エリサを抜きにして春村として考えると、私は結構嬉しいです。
――怖いとか、うわっ!とはならず?
春村 ならないです。 多分真に受けちゃいますね。それを言い続けてきたらなにか裏にあるかもと思いますけど、褒められることは素直に嬉しく思っちゃいます。佐伯さんはどうですか?
佐伯 (あっさりと)私は無理ですね(笑)。まず警戒します。
――ナンパっぽいですからね。
佐伯 アニメだからあれですけど、急にレイがエリサに顎クイした時は、どうなんだ?と思いましたもん(笑)。私は、甘い言葉ばかり吐かれるとちょっと警戒しちゃうタイプですね。
春村 顎クイは確かに警戒しますね(笑)。言葉のみなら好意的に受け取りますけど、行動に移されると私もちょっと壁を作ってしまうかもしれないです。あれはレイだから許されることだなと。
――分散収録ということで全員と一緒になったわけではないと思いますが、ほかにアフレコで印象的だった方はいますか?
佐伯 特定の方というよりも、皆さん本当にピッタリだなと思いました。すごく楽しそうに演じられていたんですよ。ギャグ要素が強めなところでいっぱい遊んでいたのも印象的で、笑いが絶えなかったですね。
春村 私はエヴィですね。収録後にエヴィすごかったな……と思いながら帰ることも多かったです。特にレイとのかけ合いが本当に面白くて、アフレコ中に笑ってしまうことも結構ありました。この作品では“筋肉”も大事なんですが、2人とも筋肉のパッションな感じが突き抜けていたので、印象に残りましたね。
――筋肉の話題が出ましたので、最後にお聞きします。筋肉は好きですか?
佐伯 はい。
春村 あんまり。
――最後まで対照的な答えですね。きれいなオチをありがとうございました!
(取材・文・撮影/千葉研一)