現在、MBS/TBS 系全国28局ネットにて放送中の、ガンダムシリーズのTVアニメーション最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下、『水星の魔女』)。
本作は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(以下、『鉄血のオルフェンズ』)以来、7年ぶりのTVシリーズ最新作であり、TVシリーズ初の女性主人公、学園が舞台、放送開始前からPARCOとのタイアップなど数多くのトピックがアニメファンを騒然とさせている。本編放送に先駆けて公開された前日譚「PROLOGUE」も、クオリティの高い映像とともにどんな物語が紡がれるのか、みんなの期待をさらに高めてくれた。
そんな注目の本作で、TVシリーズ初の女性主人公でガンダム・エアリアルのパイロット、スレッタ・マーキュリーを演じるのは市ノ瀬加那さん。そして、スレッタが通うアスティカシア高等専門学園の理事長でもあるベネリットグループの総裁、デリング・レンブランの一人娘ミオリネ・レンブランをLynnさんが演じる。
今回は、そのおふたりにそれぞれの役や演技のこと、ガンダムシリーズの印象、ガンプラのことまでいろいろとお話をうかがった。
ガンダムシリーズに抱いていた印象や見たことのある作品は?
――ガンダムシリーズは40年以上の歴史がありますが、これまでどのようなイメージを持っていましたか?
市ノ瀬 ガンダムは私が生まれる前から放送されていて、日本のアニメを代表する作品ですよね。『機動戦士ガンダム』というタイトルや、アムロとシャアというキャラクター名ならみんなが知っているような、ものすごいビッグタイトルですし、モビルスーツに乗って戦うシーンなどは特に格好いいイメージがありました。
私はもともと戦いをテーマにする作品が好きだったのですが、いざ見てみると“戦う意味”をすごく考えさせられる内容で。モビルスーツが格好いいだけでなく、すごく奥深い作品なんだと踏み込めば踏み込むほど思いましたね。
市ノ瀬加那さん(スレッタ・マーキュリー役)
――ちなみに、どんな作品を見ていたのですか?
市ノ瀬 『機動戦士ガンダム』と最近では『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』、あと『機動戦士ガンダム00』(以下、『00』)を見ている途中です。同じガンダムというタイトルでもそれぞれ描き方が違っていて、こんなにガラリと印象が変わるんだなと思いましたし、『水星の魔女』での新しい方向性を、改めていろんな世代の人に見てもらいたいなと思いました。
Lynn ガンダムは本当に歴史が長くて、たくさんのファンがいる作品というのは誰もが知っています。ガンダム作品は人間同士、それぞれの立場・主張のすれ違いや行き違いでの争いが描かれています。どちらか一方だけが敵、どちらか一方だけが正義というような描かれ方はされていないように思います。それが宇宙を中心とした舞台で繰り広げられているのは非現実でありつつ、とても人間らしい社会を描いた作品だなと感じました。
私は、学生だった頃にガンダム作品を見ていて、すごく好きだったのでいつか出演したいと思っていたんです。今回、『水星の魔女』の制作が発表されたときも「新作やるんだ! しかも主人公は女の子なんだ!」「オーディションはもう終わっちゃったのかな……受けたかったな……」と思っていたんです。そしたらオーディションの話をいただいて。せっかくですし、悔いのないようにチャレンジしたいと思いました。
Lynnさん(ミオリネ・レンブラン役)
――学生の頃に見ていたのは?
Lynn 『機動戦士ガンダムSEED』(以下、『SEED』)ですね。リアルタイムで放送しているのをたまたま見かけたのが『SEED』で、面白いなと思って途中から見ました。そのまま『SEED DESTINY』と『00』はリアルタイムで見ていましたね。そのあとに、『機動戦士ガンダム』も見ました。
――そんな歴史あるガンダムシリーズのメインキャラクターという大役を担うことになった、率直な気持ちをお聞かせください。
市ノ瀬 ガンダムのTVシリーズとしては初の女性主人公ですし7年ぶりの新作ということで、すごくプレッシャーはありました。ですが、本当に面白い作品になっていますし、学園を舞台にした物語ですから、いま青春を送っている学生の皆さんにも刺さる部分が多いと思います。たくさんの人に見てもらいたい気持ちでいっぱいです。
Lynn アニメ史には絶対に欠かせない作品ですし、声優になったら出演してみたい憧れの作品でしたので、そこに携わることの緊張感や責任の重さはかなり感じています。最新話が放送されるたびに皆さんのリアクションがすごく早くて、それだけ期待されているのもわかりましたので、ワクワクするのと同時にすごくドキドキしましたね。
スレッタとミオリネの関係性も想像を膨らませて見てもらいたい
――女性主人公で学園が舞台という新しいガンダムが見られると期待している人もいると思います。本作ならではの魅力や特徴はどんなところでしょうか?
市ノ瀬 『水星の魔女』は学園が舞台ということもあって、最初はコミカル調なところもあります。今までの作品だとすぐに生き死にに関わる戦争が始まり、シリアスな展開となることが多かったですが、本作では学園の生徒同士が自分たちの大事なものを賭けて戦う「決闘」として戦うんですよ。モビルスーツは使うけど、命が懸かった戦いというわけではなくて、割とライトな戦いなのかなって思います。でも、決闘で賭けるものによっては自分の人生を左右しかねない大事になることもありますし、それこそミオリネさんは、彼女が17歳になった時点で決闘によって選ばれた学園ナンバーワンパイロット「ホルダー」と結婚しなくてはならないというルールがあるので、人生が関わってくるんです。
――血生臭くない感じでしょうか。
市ノ瀬 はい。戦闘シーンはバキバキに格好いいけど、誰かがめちゃめちゃ傷つくことは「今の段階」ではありませんから。私たちも今後の話は知らないので、今後どうなるかは皆さんと一緒に確かめたいですが、音響監督さんにも「ここはシリアスさを少なくしてください」と言われるぐらい、決闘では緊張感はあるけどシリアス具合は少し減らす感じでやっています。生命の危険なく戦っているので、初めてガンダムをご覧になる方にも見やすい展開だと思いますし、小さい子にも見てほしいです。
Lynn 言っていただいた通りです(笑)。私たちも先の展開は知らないのですが、現段階では学園生活の中で決闘が行われていて、そのためにモビルスーツが使われているんですよ。先々は人間同士の命をかけた戦いがあるかどうかはわかりません。でも、序盤の印象はこれまでのガンダムシリーズとはだいぶ違うと思います。
――スレッタとミオリネの関係性がどうなるのかも楽しみです。
市ノ瀬 そうですね。ミオリネとはまだ友達とまではいかないかもしれないけど、今後、お互いのことをより知っていったら、どんなやり取りがあって、どんな距離感になるのか。ちょっと怖さもありつつ、楽しみですね。
Lynn ミオリネはかなり性格に難ありというか(笑)、友情関係を築くにはハードルの高い子なんですよね。スレッタとの関わりの中で彼女も変わっていくだろうし、いままで関わりのなかった人とも関わっていくだろうし、どんな展開になるか私も楽しみです。いまの孤独な人から、誰かに愛される幸せを感じるようになってほしいとは思っているので、皆さんにもいろいろと想像を膨らませながら見てもらいたいです。
スレッタもミオリネも新たな引き出しを開けてくれるキャラ
――それぞれのキャラクターを初めて見た印象や、どのようにオーディションやアフレコに臨んだのか教えて下さい。
市ノ瀬 スレッタは最初、真面目でちょっと内気な子なのかな? と思っていたんです。でも、実際のアフレコでは、たどたどしい一面があって(笑)。抜けているところもどんどん出していいし、ちょっと慌てたら何回も同じ言葉を繰り返しちゃう、挙動不審みたいなところは意識して演じました。内向的で、人との距離感がうまく掴めないというか、ちょっとちぐはぐになってしまうんですよ。
――ディレクションで特に印象的だった言葉はありますか?
市ノ瀬 衝撃的だったのは、スレッタが泣くシーンで「ショッピングモールで泣いてる子供みたいにお願いします」と言われたことです(笑)。そのぐらいギャン泣きする子なんだと驚きました。でも、スタッフさんが持っているイメージが見えてくると、どんどん好きになっていくんですよね。アフレコをするたびに、スレッタは本当に面白いしいい子だなって思います。
リアクションをするシーンでも印象深いことがありました。第1話で「ん?」と聞き返すところを、私はテストで無意識に「ご?」と言っていたんです。本番では普通に「ん?」と聞き返したんですけど、収録後に「テストの『ご?』が良かった」「もう1回、『ご?』でできますか?」と言われて(笑)。やってみたんですが……テストほど自然な「ご?」が出ず、結局はテストのバージョンを使うことになりました。それがあったので、スレッタはふとした瞬間に不思議なところを出していい子なんだと。自分の中では結構新たな挑戦になりましたし、どういう部分で魅力を出していけばいいんだろうと日々考えさせられるキャラクターですね。でも、演じていて楽しいです。
――Lynnさんはいかがですか?
Lynn ミオリネの資料を読んだらものすごく自分の好きな感じのクールな子で、体当たりのお芝居ができそうだと思い、気合いを入れてオーディションに臨みました。ミオリネ役に決まったときはすごく嬉しかったです。しかも、連絡を受けた日は私の誕生日だったので、本当に素敵なプレゼントをいただいた気持ちでしたね。女性主人公というチャレンジングな作品に、自分も同じように挑戦できるのがすごく嬉しくて。それに、市ノ瀬さんと共演してみたいなとずっと思っていたので、2人で一緒にメインができるのは大変光栄です。
市ノ瀬 嬉しい〜!
――アフレコで演じてみて、印象が変わったところなどはありますか?
Lynn 最初に感じたクールな子という印象は、実際に演じてみると全然そんなことなくて(笑)。私が台本を読んで思ったよりも、結構感情が表に出るんです。それで監督に「感情表現が豊かな子なんですか?」と聞いたら、「豊かというよりは、自分の思っていることを隠さない子ですね」と。怒っているときは怒っている態度だし、人の目や誰にどう思われるとか全く気にしないで、感じたことや思ったことを瞬間的に返せる。言葉はとてもストレートで、なにもオブラートに包まない子なんです。
だから、最初は変に抑え込もうとかクールにしようと役作りしていたけど、ぶつけるところはもっとぶつけていいし、相手をイラッとさせる言い方をしてもいい。そうディレクションいただいてからは、練習するときも普段の私なら選ばない表現を選ぶようにしています。パッと台本を読んだときに「こうかな?」とまず出てくるんですけど、そうじゃなくてもっと人間くさい反射的な言い方でテストをしてみたら、OKをいただけたんですね。今までなかった引き出しをガンガン開けて答えを探してく作業が毎回すごく面白いです。
『水星の魔女』のガンプラは絶対にゲットして作りたいです!
――ガンダムといえば、ガンプラも人気ですよね。おふたりはガンプラを作った経験や興味を持ったことはありますか?
市ノ瀬 はい!いろいろ作らせていただきました! 「HG1/144 ガンダムエアリアル」「SDガンダム EXスタンダード ガンダムエアリアル」「モビルスーツアンサンブル ガンダムエアリアル」あとMSではないのですが、「Figure-rise Standard スレッタ・マーキュリー」も作りました! ミオリネさんも発売されたら作りたいです。
――ガンプラを作ってみて、どうでしたか?
市ノ瀬 箱を開けると、プラスチックの板みたいなの(パーツのついたランナー)が3枚ぐらい入っているじゃないですか。そこからパチパチと分解していくんですけど、最初は正直「こんなにパーツが細かくて、できるかな?」と思ったんです。でも、ひとつひとつ手順をよく見て、角度や方向が間違えていないかしっかりチェックしてやっていくと、カチッとハマる瞬間があって。立体パズルみたいで面白いなと思いました。作るのに3〜4時間かかりましたが、休憩せずに熱中しちゃうぐらいすごく面白かったです。これはハマりますね。
――熱中しちゃいますよね。Lynnさんはいかがですか?
Lynn 作ったことはまだないですけど、『00』を見ていた頃にとても欲しかったんですよね。でもまだ学生でしたし、うちは結構厳しかったので買えなくて……。お菓子コーナーに小さいサイズで完成されているものが売っていたので、それをコレクションして飾っていました。今回は絶対にゲットして作りたいと思っています。
――物を作ること自体は好きなのですか?
Lynn 細かい作業や図工とか好きだったので、ガンプラも絶対にハマると思いますね。
――Lynnさんは以前からガンダムに出演したかったと話していましたけど、モビルスーツに乗ってみたいという希望も?
Lynn もちろんあります。というか、オーディションを受けたときは乗るんだと思っていたんです。第1話で一瞬乗ってましたけど、蓋を開けてみたらどうやらパイロットキャラではないみたいでちょっとショックでした(笑)。
市ノ瀬 まだ分かりませんよ?(笑)
Lynn そうだよね。監督に直談判します!(笑)
(取材・文・撮影/千葉研一)