【ゲームコラム】遊び始めたら止まらない! 「FINAL FANTASYVII REBIRTH」のサービス精神とエンタメ魂に圧倒された2か月

「FINAL FANTASY VII REBIRTH」が発売されてはや2か月が経とうとしている。発売日に購入された方の多くは、すでにエンディングを迎え、「早く続きをやらせてよ!」とジタバタする日々を送っていることだろう。

自分も発売日に本作を入手し、プレイを開始。サクッとクリアしてレビューを書こうかなと思っていたのだが、遊び始めて数時間。

「これはサクッと遊べない……!」

と愕然としたものである。確かにメインストーリーのみを追いかけて、表層をなぞったレビューは書こうと思えば書けただろう。

しかし「FINAL FANTASY VII REBIRTH」というゲームは、メインストーリーだけを追いかけるだけでは、その魅力を1割も語ることができない。むしろ、サブクエストやさまざまな要素を遊びつくさねば、真の楽しさを語れない。そう感じてしまったのである。

結論から言うと、その直感はまったく間違っていなかった。本作は単なるレトロゲームのリメイクというレベルをはるかに凌駕し、現時点における最強のJ・RPGと呼んでも差し支えないほどにボリューミーで、カラフルで、エモーショナルなエンターテイメント大作であった。

 

 

27年前、高校生の頃に初めて「FINAL FANTASY VII」を遊んで衝撃を受けた時の思いが蘇る(まさにREBIRTH)ような、本作についてつらつらと語ってみたい。

 

「FINAL FANTASY VII REMAKE」とは根本的に異なるゲームだ!

 

「FINAL FANTASY VII」(以下、FFVII)のリメイクプロジェクト第1作目「FINAL FANTASY VII REMAKE」は、「FFVII」のアイコン的な存在である大都市・ミッドガルを舞台にストーリーが展開する作品であった。

1997年、PlayStationで発売された原作の「FFVII」が発表された時も、ミッドガルの描写に注力されていたことからもわかる通り、当時の最先端の3DCGで描かれたゴミゴミとした都会を、歩いて回れることが「FFVII」の一つのフックであった。

原作では全体の5~6分の1程度のボリュームだったミッドガルでの物語だが、「REMAKE」ではそこでのストーリーを膨らまし、キャラクターや世界観の掘り下げを行うことで、独立した1本のゲームに仕上げたわけだが、その弊害として全体的に重たい作風になってしまったように思う(これはゲームとしての面白さは別である!)。

確かにゲームとしては面白いし、ストーリーも原作のストーリーをさらに掘り下げつつ新たな要素を交えて展開することから、ファンとしては非常に楽しく遊ぶことができたのだが、どうにも閉塞感漂う印象が拭えなかったのも事実だ。

 

 

申し分ない満足度は得られたし、当時の思い出の解像度を上げる、という意味で「REMAKE」は普通にいいゲームだったというのが個人的な感想だ。そのため、次も思い出の確認作業的に楽しめたらいいかな、くらいの(つまりそこまで過大な期待を寄せないレベルの)気持ちでリメイクプロジェクト第2作目「FINAL FANTASY VII REBIRTH」を遊び始めたのだが、先ほどまでのヌルい気持ちはすぐに吹き飛ばされてしまった。

 

 

どこまで広がる大地。いたるところに点在するクエストやアクティビティ。行けそうな場所にはどこへでも昇り降りできる新システム「パルクール」。目の前に広がる全てのフィールドが冒険可能なエリアなのである。

ちょっと、ちょっとちょっと! 何、この進化は! 前作が限られた都市空間を舞台に、なんとも息苦しく、自由度の低いフィールドばっかりだったのに、今回はその真逆! 目に映る、およそ「行けそうな場所」はどこでも行けてしまうという衝撃的な解放感と自由度に満ち満ちているのだ。

 

 

グラスランドエリアは草原と荒野、湿地帯に鉱山「ミスリルマイン」。ジュノンエリアはかつての戦争の傷跡が残る軍事都市。ゴンガガエリアはジャングルが広がり、コレルエリアでは鉱山と砂漠が広がる中にリゾート地があったりと、多彩な風景が緻密なCGで描かれている。次から次へとあらわれる新しい世界を旅する気分は、まさにロードムービー。今度はどんな場所を冒険できるんだろう、とどんどん先に進みたくなるのである。

しかも各エリアとも、2つと同じ地形は存在しない作り込み。だから全ての風景が新鮮で、もっとこの世界を歩き回りたくなる。

 

 

実際には、エリアごとにフィールドが分割されているためオープンワールドというわけではないのだが、どのエリアも徒歩で歩き回る分には十分すぎるほどの広さ。しかも荒野、草原、砂漠に水辺とさまざまな情景がプレイヤーの目を楽しませてくれる。そのうえ、かつての大戦の傷痕ともいえる廃墟や廃集落も点在していたりして、戦前はそこにあった人々の生活を思わせてくれるのも面白い。廃墟マニア的にはたまらないのはもちろん、そういう場所に隠されている隠しアイテムの発掘もまた楽しい。

 

 

また、フィールドには各エリアの歴史や情報が刻まれたマテリア(星を巡るエネルギーが結晶化したもの)や召喚獣の情報が多数隠されている。これらの情報を収集することで、プレイヤーが冒険する世界への理解度がより深まっていく。

 

 

各エリアに存在する街、集落もまた非常に作りこまれている。お店もそれぞれ個性にあふれているし、住人もまるで本当にその場所で生活しているかのように、リアルに動き、会話している。ただ街をうろついているだけで楽しいのは、ちょっと驚きである。旅行先の街を、目的もなく散策するようなワクワク感がある。

 

 

主人公・クラウドは「なんでも屋」ということで、各地でさまざまな人から仕事を依頼される。このサブクエストを攻略することで、市井の人たちの生活を垣間見ることはもちろん、未知のモンスター退治を通じてレアなアイテムをゲットすることもできる。メインストーリーを追いかけるだけではフォローしきれない本作の裏側を楽しむことができるのだ。

 

 

これらの要素を拾っていくことで、より「FFVII」の世界、ストーリーを深く楽しむことができる……となれば、「FINAL FANTASY VII REBIRTH」をやりこまないわけにはいかないだろう。

 

 

ミニゲームの類も尋常じゃないクオリティだ。原作でも存在したアミューズメント施設「ゴールドソーサー」や、リゾートタウン「コスタ・デル・ソル」のミニゲームは、それぞれ単独のゲームとして楽しめるレベルの作り込みで、一度ハマるとハイスコアを目指してどんどん時間が溶けていく。

 

 

また本作から新登場した対戦型カードゲーム「クイーンズブラッド」は、普通にTCGとして展開できちゃうんじゃないの!?というレベルの作り込み! 本当によくできているので、リアルTCGとして展開してもらいたい!

 

 

街を歩き回り、フィールドを隅から隅まで歩き回り、サブストーリーを味わいつくし、ミニゲームを遊び倒そうと思えば、必然的にプレイ時間はどんどん増えていく……。しかし、どこまで掘っても底が見えないのに、決して冗長な印象がないのは驚きだ。

「もっとこの世界で遊びなよ!」「ほら、こっちにも楽しいイベントがあるよ!」とゲームから腕を引かれ続けている感覚と言ってもいい。「頼むから、今日はここで止めさせてくれ~!」と心の中で叫びつつ、「あともう少しだけ…」とついついプレイ時間が長くなる日々の連続だったように思う。

 

 

振り返ると、「REMAKE」は「FFVII」の導入部としてストーリーを優先せざるを得ない、という点でも、ある種の窮屈さを持った作風になっていたのは仕方がなかったと思う。対して、メインキャラが出そろい、ストーリーが本格的に動き出し、舞台が世界規模に広がった「REBIRTH」こそが、「FFVII」リメイクプロジェクトの真の姿だったのだ、と今なら言える。

もしここまでのものを「REMAKE」の段階で提示できていたら……と思うと残念な気もするが、最初の閉塞感があってこその「FFVII」だとも思うので、そこは痛しかゆしといったところか。

 

より遊びやすくなったバトル

アクションRPGスタイルのバトルになった「FFVII」」リメイクプロジェクト。前作もスピーディなアクションと、コマンドバトル的な遊びやすさが同居した良システムだったが、「REBIRTH」では操作可能なキャラが増え、より多彩なバトルを楽しめるようになったのは嬉しいところ。

 

 

前作から引き続き、クラウド、エアリス、ティファ、バレットの4人は操作可能。そこに、本作からユフィ、レッドXIII、ケット・シーの3人が操作可能となる。

 

 

ユフィは近接戦闘と手裏剣と忍術を使った遠距離攻撃の組み合わせが超強力だし、レッドXIIIはガードを成功させると貯まっていくリベンジゲージを発動させてからの猛ラッシュが気持ちいい。ケット・シーはモーグリを使ったトリッキーな戦闘が楽しめるという具合に、より個性が強調された感がある。

 

 

キャラごとに固有のアクションが用意されているということで、戦い方を一つひとつ覚えるのが大変そうな印象もあるが、コマンドを入力する際は時間の経過が非常に遅くなるウェイトモードとなるため、目視でコマンドを選択したリ、戦略を考えつつ行動を決定することができるので、アクションが苦手な人も落ち着いて戦うことができる。いっぽう、アクションが得意でバシバシ戦いたい人は、あえてスピーディな設定にすることもできるので、好みのスタイルで遊ぶことが可能。

 

 

また、本作からの新要素として「連携」がある。バトルメンバー同士の条件がそろうと2人同時に強力な攻撃を発動させる「連携アビリティ」や「連携アクション」が使用できる。これが成功すると、キャラ同士の親密度にも影響が出るものもあるので、特に仲良くさせたいキャラ同士で連携させる……なんて風に意識して遊ぶこともできる。

 

 

前作はあくまで個別に行動していたバトルシーンだが、今回は連携のおかげでよりキャラクター同士の関係性が感じられる作りになっている。ゲームシステムとしてもスピーディかつ、迫力のある展開が楽しめるわけだが、キャラクター同士の関係性を重視するプレイヤーも、お気に入りキャラ同士のタッグを堪能できるということで何度も連携技を発動したくなること請け合い。数々の障害を乗り越え、パーティーメンバーの結束が強まった結果、連携ができるようになった……という妄想もついつい捗ってしまう。

バトルの楽しみ方の幅がさらに広がった感がある。

 

 

ちなみに個人的にはユフィの強さには相当助けられた感じだ。手数の多い近接戦闘の強さもさることながら、手裏剣を投げつけてからの属性忍術攻撃には何度も助けられたし、質より量で攻めてくるタイプの敵には、固有アビリティ「やぶからぼう」を連発して一掃したりととにかく状況に応じてさまざまなアクションが取れるのが強み。

みなさんも、ぜひお気に入りのキャラを見つけて、やりこんでみてほしい。

 

ハイエンドCGと声優による演技がもたらす、ドラマの深化!

ストーリーについても触れておこう。

本作は原作におけるミッドガル脱出以降から、DISC1の最後までがリメイク範囲となる(原作のPlayStation版は3枚組CD-ROMだった)。となると、エアリスの悲劇的な運命が本作ではどうなってしまうのか……というところが気になる方も多いだろうが、それは実際に遊ぶまでの秘密である。

さまざまな可能性を示唆したままストーリーはリメイクプロジェクト第3作目へと続く形になるので、早く続きを遊ばせてください!というところ。

 

 

そこ以外の点に触れるなら、フォトリアルなCGキャラによる演技と、声優陣の迫真の演技の合わせ技で非常にエモーショナルな仕上がりになっていることだろう。

原作の「FFVII」は、粗いポリゴンキャラによる演技とテキストのみでストーリーが描かれえいた。もちろんそれはそれで行間を読ませたり、想像力を刺激したりする当時ならではの演出方法で味わい深いものなのだが、本作は徹底的に作りこまれた映像と迫真の演技のおかげで、まさに映画を観ているかのように胸に迫るシーンが多数描かがれる。

 

 

特にゾクッときたのが、クラウドとエアリスの間の生じている記憶の齟齬と、その謎に迫ろうとする二人の会話シーンだ。両者の記憶の食い違いと、その答え合わせが「FFVII」のストーリーの面白さの一つなのだが、それゆえに両者に生まれる不穏な空気と、それを生々しく感じさせる声優陣の重めの演技はちょっとしたサスペンス映画のような迫力を感じさせた。

 

そのほか、娘・マリンを巡るバレットのドラマやレッドXIIIと父親のエピソードについては、実際に子供を持つ親父としては共感して涙せざるを得なかったし、普段は明るくふるまっていながらも不遇の半生を歩んできたエアリスの時折見せる素顔も、実に見ごたえ十分。まるで本当に、そこにキャラクターが生きているかのようなリアリティが感じられる。

これは間違いなく徹底的に作りこまれたキャラクター性とビジュアル、そして声の演技の合わせ技の賜物。原作版「FFVII」にはできなかったことである。

 

 

原作版では技術的にできなかったことが、このドラマ性の深化というならば、この時点でリメイクプロジェクトは大成功!と言える。

 

 

また、原作版ではあまり掘り下げられなかったソルジャー・ザックスが、本作では重要な役割を演じる。同様に、そこまでじっくり描かれなかったヴィンセントとタークスの因縁も、掘り下げられているのも見どころだ。スピンオフ作品で活躍が描かれている両者だが、本作ではその要素も取り込まれているように見える。

これまでさまざまなタイトルで展開してきた「FFVII」シリーズを、このリメイクプロジェクトで総括しようとしているのだろうか。これまた3作目の展開に期待したいところだ。

 

 

最後に、原作版ではプレイアブルキャラとして登場したヴィンセントとシドについて触れておこう。この2人は、本作では仲間に加わるものの、サポートキャラ的な立ち位置にとどまりプレイヤーが操作することはできない。両者のファンにとっては残念だろうが、確かに今回のゲームシステムでこれ以上プレイアブルキャラが増えたら、操作しきれないだろうなあ……という気もする。

また、ヴィンセントは銃で攻撃、シドは槍(長物)で攻撃という具合に、わりと他のキャラとかぶり気味なので、バトルアクションに変化を付けるのも難しかったのではないだろうか。

その分、2人ともストーリー上で重要な役割を演じることになるので、ひとまずはそれで我慢我慢……といったところか。

 

 

ひと通り遊んだ印象だと、特定のキャラが目立っていなかった……という印象はないので、非常にバランスよくキャラを配置しているとは思う。

 

 

あ、そうだ。「FFVII」といえば忘れちゃならないゴールドソーサーでの観覧車イベントも、ばっちり収録されているのは触れておきたい。原作版では隠しパラメータとしてキャラごとの親密度が設定されていたが、本作ではボタン一つで各キャラの親密度が確認できる仕様になっている。この親密度はストーリー中に発生する会話イベントの結果や、連携アクションの使用頻度などで上下する。この好感度次第でストーリー後半に用意されているイベントに登場するキャラや、観覧車でのデートイベントが変化する。お目当てのキャラとのロマンチックなひと時を過ごしたい方は、好感度に気を付けて遊ぶべし。

ちなみに筆者は、レッドXIIIとの甘~いひと時を満喫した。いや、これはこれでなかなかいいシーンだと思うので、不満はないんだけどね。ないんだけど……。

 

 

そういう、お目当てのキャラとのデートイベントができなかった方もご安心を。一度ゲームをクリアしたら、チャプターごとにゲームをやり直せるモードが追加されるので、初回プレイで取りこぼした要素や好感度上昇イベントのやり直しもできるようになる。そういったユーザーフレンドリーな仕様も嬉しい限り。

 

なお、第1作「REMAKE」もまだやってないよ!という方のために、ストーリーをおさらいできるダイジェスト映像が収録されているのもありがたい。何はともあれ壮大な世界観による、微に入り細を穿つように作り込まれたマップを舞台に、魅力的なキャラを自在に操り、人間ドラマを楽しむことができる本作は、まさに総合エンターテイメント! かねてより「FINAL FANTASY」シリーズが目指していた「映画のようなゲーム」の、現時点での究極形といえる。「FINAL FANTASY VII REBIRTH」の世界に浸った2か月は、この上ない幸福な時間であった。

 

すべてのゲームを愛する人に、この幸福を体験していただきたい。そう心から願っている。

【タイトル情報】
■「FINAL FANTASY VII REBIRTH(ファイナルファンタジーVII リバース)
ジャンル:RPG
対応プラットフォーム:PlayStation5
発売中
価格:9,878円(税込)
公式サイト:#
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(C) SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI LOGO ILLUSTRATION:(C)  YOSHITAKA AMANO